天然の化学原料
自然からの贈り物、天然のケミカル原料
天然の化学原料
テルペンとは
テルペンは植物体内で生合成で作られ、構成単位がイソプレン構造を有し代表的な化学式は(C5H8)nで表されます。その代表的な成分であるα-ピネンは、人には森林浴効果をもたらし、植物にとっては外敵を防ぎ自身の体を守るための大切な物質(フィトンチッド)の一つと考えられています。
テルペンは天然に広く存在しており、特に植物の精油に多く含まれますが、私たちが工業原料として安定的に、しかも大量に集められるものとしては、松の木に含まれるテレビン油とオレンジの皮に含まれるオレンジオイルが挙げられます。
オレンジオイルとテレビン油は、将来の枯渇が心配される石油資源とは異なり、植物が太陽の恵みをもとに繰り返し造り出すことが出来る再生可能な貴重な資源なのです。
柑橘類の皮(オレンジピール)等に含まれる油分。
写真は樹液を採集する様子。
化学原料、テルペン
こうして採取されるテルペンですが、
化学的にはイソプレン(C5H8)がいくつか結合した構造で、
炭素と水素とだけからなる化合物です。
※イソプレン
この化合物が重合し、高分子化したものが天然ゴムとなる。
これら炭化水素の中の炭素5、水素8で
構成されます。このうちの炭素数の数に
よりテルペンは分類されます。
イソプレンをユニットとして
いくつか結合したものがテルペン
テルペン類と代表的な化合物の例
- ・誘導体をテルペノイドという
- ・酸素酸化を受けやすい(不飽和)
- ・水に溶けにくい
- ・植物から溶媒抽出や減圧蒸留等で分離。
モノテルペン(炭素10)
(例)リモネン(環状)
ミルセン(非環状)
セスキテルペン(炭素15)
(例)セドレン(シダーウッド)、
カリオフィレン(クローブ)
ゲルマクレン(イランイラン)
ジテルペン(炭素20)
(例)甘味成分(ステビオシド類)
抗癌剤(タキソール)
トリテルペン(炭素30)
(例)サポニン、ジンセノシド類、グリチルリチン
出典1:これならわかる生物有機化学:太田 博道 著より
出典2:エッセンシャルオイルの科学:亀岡 弘 著より
コラム:もとは海軍物資だった松脂
第二次世界大戦中、石油の輸入が途絶えた日本は、石油資源の不足を補うための国策のひとつとして、松根からテレビン油を生産せざるを得ませんでした。
松根の乾溜工場は日本全国津々浦々にあり、軍需産業として軍の保護を受け、生産された松根油は、石油の代替燃料として軍に供出されました。
戦後は、軍需産業から平和産業へと脱皮し、戦後の復興に貢献しました。
参考:ワイエス広場 第66号(昭和63年5月)
槙本通「木材乾溜工業」